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スペインこれまで世界に有名な画家を沢山輩出してきました。
彼らによって生み出された絵画をみようと、今でも世界中からスペインに訪れる人が後を絶ちません。
わたしは何度も実際に傑作と言われるスペイン絵画を見に行っていますが、いつもその圧倒的な存在感に心が揺さぶられます。
それではここでは
・スペインの画家や絵画について興味がある
・スペイン旅行でスペイン人画家の作品を見たい
と考えている方のために、スペインで有名な画家とその代表作、それにスペイン絵画の傑作が見られる場所等について紹介していきますよ。
エル・グレコ
エル・グレコ(1541年~1614年4月7日)はスペイン絵画の三大巨匠のひとりで、ルネッサンス後期のマニエリスムを体現しています。
スペイン人画家で一番最初に紹介しておいて何なんですが、エル・グレコはスペイン人ではなくギリシャ人です。
エル・グレコというのは本名ではなく、“ギリシャ人”という意味の彼の呼び名だったんですよ。
イタリアでの活動を経て36歳でスペインに渡ってきた彼はそれから生涯をスペインで過ごし、代表作のほとんどをスペインで制作しています。
特に肖像画や宗教画を多く描き、彼がこよなく愛して終の棲家としたトレドの大聖堂や教会には彼の作品が多く残っていますよ。
今でこそ世界中にファンが多い彼の作品ですが、当時はその独特な縦に長く伸びたような構図や大胆な色使いに批判的な声もありました。
当時のスペイン王フェリペ2世もグレコの絵を評価せず、宮廷画家になるというエル・グレコの目的は叶うことはありませんでした。
宗教画家としては当時から一定の評価を得ていたものの、エル・グレコが本当に評価されたのはなんと20世紀に入ってからなんですよ。
わたしは個人的にスペイン絵画の三大巨匠の中でエル・グレコの作品が一番好きです。
エル・グレコの代表作
『オルガス伯の埋葬』(1586年-1588年)
『聖マウリティウスの殉教』(1580年-1582年)
『羊飼いの礼拝』(1612年-1614年)
『三位一体』(1577年)
エル・グレコの作品を見ることができる場所
エル・グレコの作品の多くはマドリードのプラド美術館で見ることができます。
ただエル・グレコの最高傑作と言われている『オルガス伯の埋葬』はトレドのサン・トメ教会に飾られています。
知らないと通り過ぎてしまうような小さな教会ですがグレコファンの方は必見ですよ。
ディエゴ・ベラスケス
ディエゴ・ベラスケス( 1599年~1660年8月6日)はスペインがその歴史上一番繁栄していた17世紀の黄金時代にフェリペ4世の宮廷画家勤めたスペイン絵画三大巨匠のうちの一人です。
スペイン絵画のバロック期を象徴する画家で、彼が残した作品は彼の生前から現在に渡って非常に高い評価を得ています。
世界三大美術館に数えられることも多いマドリードのプラド美術館でも、彼の『ラス・メニーナス』が一番の見どころの一つになっていますね。
若い頃から宮廷画家として王宮に使えていましたが、ルーベンスとの交流やイタリアへの旅行などを通じ、当時活躍した画家たちと交流を持っています。
イタリア滞在時には当時のローマ教皇の肖像画も手掛けていますよ。
フェリペ4世から絶対的な信認を得て彼や彼の家族の肖像画を多く描いたベラスケスは、当時の画家としては超異例の爵位の称号を与えられることになります。
先述の『ラス・メニーナス』には鏡の中に映り込むベラスケス自身の姿が描かれているのですが、爵位を得てからこの絵の中の自身の服にわざわざ爵位を示す十字架を書き足したと言われているんですよ。
とはいえ生前のベラスケスは宮廷画家でフェリペ4世のお気に入りということを鼻にかけたりしない人格者だったと言われています。
超絶エリートともいうべき彼のキャリアなのですが、ベラスケスには1つ周囲にひた隠しにしていた秘密があったと言われています。
父親の家系が当時のスペインで迫害の対象となっていたユダヤ教からカトリックへの改宗者・コンベルソだったとされているんですよ。
完璧に見えるその生涯の中でベラスケス胸の奥に隠し持っていた苦悩を思うと、ベラスケスの絵画にあれほどの深みがある理由が少しわかる気がします。
ディエゴ・ベラスケスの代表作
『ラス・メニーナス』(1656-1657)
『ウルカヌスの鍛冶場』(1630年頃)
『ブレダの開城』(1634-1635)
『教皇インノケンティウス10世』(1650)
『 鏡を見るヴィーナス』(1648)
ディエゴ・ベラスケスの作品を見ることができる場所
24歳から亡くなるまで宮廷画家として活躍した彼の作品は、その多くがマドリードにずっと残ることになりました。
そのためフェリペ4世の肖像画や王女マルガリータの肖像画、それにもともとイタリアで描いた『教皇インノケンティウス10世』などスペイン国外に流出した絵画もいくつかあるものの、代表作の多くはスペイン王家のコレクションを集めたプラド美術館で見ることができます。
ベラスケスの絵画を堪能するならやはりプラド美術館に行くのが一番ですよ。
フランシスコ・デ・ゴヤ
フランシスコ・デ・ゴヤ(1746年3月30日~1828年4月16日)は18世紀から19世紀にかけて活躍したロマン主義の画家で、スペイン絵画三大巨匠の最後の1人でもあります。
40歳の時に宮廷画家となったゴヤはカルロス3世とカルロス4世という2人のスペイン国王に使えました。
ただその7年後の1792年には順調だったキャリアと裏腹に原因不明の病に侵されて聴力を失ってしまいます。
これが彼の性格と精神に暗い影を落としたと言われていて、時にゴヤの作品にみられる風刺的な視点はこの頃に得られたものとされています。
ただゴヤの画家としてのピークはむしろ聴力を失った後の時期なんですよね。
1799年にはとうとう宮廷画家のトップに立ちますが、その8年後今度はナポレオン率いるフランスの軍勢がスペインに進行してきます。
一時マドリードはフランス軍に占拠されたためゴヤは宮廷から追われることになりますが、そんな中でも『マドリード、1808年5月3日』等で当時の様子を描き続けていますよ。
『黒い絵』は彼がそんな絶望の中で描いた連作です。
フランシスコ・デ・ゴヤの代表作
『着衣のマハ』(1797年-1803年頃)
『カルロス4世の家族』(1800-1801年頃)
『マドリード、1808年5月3日』(1814年)
『我が子を喰らうサトゥルヌス(黒い絵)』(1820-23年頃)
フランシスコ・デ・ゴヤの作品を見ることができる場所
ゴヤも宮廷画家であったことからその作品の多くはマドリードのプラド美術館で見ることができます。
プラド美術館にはゴヤが宮廷画家時代に描いた『カルロス4世の家族』といった作品だけでなく、その後の『黒い絵』も展示されています。
これらの絵を見比べているとゴヤという巨匠の決して平穏ではなかった人生やその中での苦悩がひしひしと伝わってきて胸が締め付けられます。
パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソ(1881年10月25日~1973年4月8日)はキュビズムを築いた20世紀に最も活躍した画家です。
スペインのマラガで美術の先生だった父のもとに生まれたピカソは幼少期から絵の才能をいかんなく発揮します。
14歳の時にバルセロナの美術学校に入学しますが21歳の時にはパリに移り住み、その後生涯をフランスで過ごすことになりますよ。
独創的で唯一の作品を生涯にわたり5万点あまりも描き続けたと言われています。
その作風の移り変わりは『青青の時代』や『バラの時代』それに『分析的キュビスムの時代』や『総合的キュビスムの時代』、『キュビスム表現主義の時代』などに細かく分けられていますね。
ピカソはフランスに移り住んですぐ自分の作風を確立するまでは苦悩の日々を過ごしますが『アビニヨンの娘たち』を制作したころからその評価はうなぎ登りとなり当時の最高の画家としての地位を確固たるものにします。
またスペイン内戦のニュースを耳にしたピカソが反戦の思いを描いた『ゲルニカ』はあまりにも有名ですね。
私生活では相当なプレイボーイだったピカソはその生涯で妻や同棲した恋人を合わせて生活を共にした女性は合計7人にも上り、そのうち3人の女性との間に4人の子供を残しています。
パブロ・ピカソの代表作
『ゲルニカ』(1937年)
『アビニヨンの娘たち』(1907年)
『泣く女』(1937年)
『鳩と少年』(1901年)
パブロ・ピカソの作品を見ることができる場所
ピカソの作品はとにかく数が多いので、色々な国にその作品が散らばっています。
ただ彼の最高傑作である『ゲルニカ』はピカソ自身の希望でスペインに返還されマドリードのソフィア王妃芸術センターに展示されています。
ソフィア王妃芸術センターにはピカソの他の作品もたくさん見ることができますよ。
また出身地のマラガと美術学校に通っていたバルセロナにはパブロ・ピカソ美術館があります。
サルバドール・ダリ
サルバドール・ダリ(1904年5月11日~1989年1月23日)はスペインのカタルーニャ地方出身のシュルレアリスムを代表する画家です。
上に向かって跳ね上がったトレードマークの口ひげからもわかるように相当な変わり者だったようですね。
ピカソとも交流があったと言われているダリの作品は“カマンベールチーズの質感で描かれた時計”や“白鳥と思ったら象?”といったような、2つのイメージを重ね合わせるという独特の手法をとっています。
幻想的で摩訶不思議なのですがどこか幾何学的な印象も与える唯一無二の世界観にひきつけられます。
妻のガラを生涯にわたって愛し彼女が登場する作品もいくつか残しています。
サルバドール・ダリの代表作
『記憶の固執』(1931年)
『燃えるキリン』(1937年)
『ナルシスの変貌』(1937年)
『水面に象を移す白鳥』(1937年)
サルバドール・ダリの作品を見ることができる場所
ダリの作品はマドリードのソフィア王妃芸術センターに多数展示されています。
ソフィア王妃芸術センターはピカソとダリの人気の上昇により、世界中から沢山の人を集める一大観光スポットになっていますよ。
スペイン絵画の巨匠の作品が見られるマドリードの美術館についてはこちらの記事をご覧くださいね。


まとめ
スペインは古典主義から近代絵画まで誰もが名前を知っているような絵画の巨匠が沢山生み出してきました。
それぞれ個性的な画家が多く、絵画はもちろんその人となりや生涯も調べてみるとかなり興味深いです。
そしてそんな巨匠たちの作品が集まるのがマドリードの美術館通り。
スペイン絵画に興味がある方はマドリードのプラド美術館やソフィア王妃芸術センターをぜひ訪れてみてくださいね。
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